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udeco 2011.5.30

udeco(ユデコ)は、富山県高岡市の産業振興プロジェクトです。ユニバーサル・デザイン(UD)と、エコロジー(ECO)を考えた商品づくりがテーマ。今はUDもECOも同時に考えなければなりません。そこでUDとECOを合わせたudeco(ユデコ)という新しい概念を高岡から発信することにしました。

001(Photo001-004:Takashi Ashitomi)

高岡は世界有数の鋳物の産地です。仏具や茶器、町で見かける銅像やお寺の鐘などの多くが高岡で生産されています。金属を溶かし、型に流し成型する。成型された鋳物は、研磨や着色などの過程を経て商品となります。ドロドロに溶けた金属が型に流し込まれる様子は、神秘的な儀式に見えます。工場の薄暗い光と対照的な研磨された鋳物が放つ光。それらに本能的に魅了されます。そこには理屈では説明できない何かがあると思います。
しかし鋳物の生産には膨大なエネルギーが使われています。果たしてこれはエコロジーと言えるのか?固くて重い鋳物はユニバーサルデザインになり得るのか?

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ユニバーサルデザインもエコロジーデザインも論理的に説明しなければならないデザインの課題です。しかし論理的に説明はできないが、輝く炎や光のように、誰もが魅了されてしまう現象もあります。それは誰にとっても優しいデザインですから、ユニバーサルデザインと言えるのではないか?神秘的なことに心傾ける姿勢や自然に対する畏怖の念は、エコロジーと言えるのではないか?
現在は、ユニバーサルデザインもエコロジーデザインも、論理的、科学的なアプローチしかないように思いますが、それだけでは人間中心的な考え方だと思います。論理的でも科学的でもないが、人や自然にも優しいこともあるように思います。udecoは、これまで構築されてきたユニバーサルデザインやエコロジーデザインの概念を踏まえながら、さらにその概念を広げる試みでもあるのです。

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udecoは3年間のプロジェクトです。スタートは昨年の春。1年目は、ユニバーサルデザインとエコロジーに対する知識を深めるための勉強会と、「テープカッターのデザイン」をケーススタディーとして、udecoの考え方の構築を目指しました。
デザインは、「いのり・いわい」プロジェクトの時と同様に作り手と高岡市デザイン・工芸センターのスタッフたちが考えています。各自のアイデアをスケッチやペーパーモデルを使ってプレゼンテーションし、全員で審議しながらデザインをブラッシュアップしていきました。デザイナーと同じ手法です。作り手がデザイナーでもあるのです。「作り手がデザイナーになる」というのは、「HiHill」プロジェクト以来の目標でした。デザイナーに頼らなくてもモノづくりができるシステムづくりです。それが10年かかって「いのり・いわい」プロジェクトで達成された。今では高岡の作り手の多くが、デザイン的視点を持って、モノづくりをするようになっています。
テープカッターも今までに無いデザインが数多く提案されました。商品化までもう少し掛かるのでデザインを紹介できませんが、udecoの概念をカタチで示すことができそうです。
そしてプロジェクト2年目がスタートしました。今年から来年に掛けて、いよいよ参加メンバーそれぞれが決めたアイテムを、udecoの概念でデザインしていきます。