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PREDUCT 2012.2.18

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タイトルの"PREDUCT"とは、PRODUCT(生産物)とPREDDICT(予言する)を組み合わせた造語です。
PRODUCTは、現存するモノのことですが、PREDUCTは、現存しないモノを現存するかのように見せること意味します。そうすることによって、最小限のエネルギーを使って様々なプロダクトを創出し、そのデザインの可能性を探ることができると考えています。
最近のCG技術を使えば、現実にないモノを、あるように見せることは可能です。しかし、いくら高性能なCGを使っても、なんとなくCGっぽさというものは感じるものです。現存しないモノを現存するかのように見せることは意外に難しい。そこであらめてCGのビジュアル表現について考えてみることにしました。

左図は、CGと写真、それぞれが目指しているベクトルです。主にCGが目指しているのは、写真のようなリアリティー表現です。ところが、写真が目指しているのはイメージ(バーチャル)表現です。被写体の印象(それをリアルと言うのかもしれませんが)を表現することに注力する。つまりCGと写真のベクトルは真逆を向いているように思います。そう考えると、二つのベクトルの交点(Crossing Point)が存在することになります。Crossing Pointは、CGと写真の境界が曖昧な領域です。とすれば、CGでひたすらリアルな表現を求めなくても、十分リアルに見せられる可能性があることになります。
CGの表現力は、ソフトウエアに依存するため、同じソフトウエアを用いたCGは、印象が似てきます。CGを見れば大体どのソフトを使ったかがわかるのはそのためです。しかしCrossing Pointを意識すれば、写真のイメージ表現の多様性とリンクした、様々なレベルのリアリティ表現の可能性が見えてきます。

002〜005は、ちょっとした実験です。002と003は、写真です。004と005は写真とCGの合成です。002と003の解像度は大きく異なりますが、どちらも写真だと認識できるのではないでしょうか?むしろ解像度が荒いほうが写真っぽいと感じる人も居るかもしれません。そして解像度が荒い画像どうし(003と005)を比較すると、解像度が高い画像よりもCGと写真の差がわかりづらくなります。ということは、リアルな表現は、必ずしもCGの表現能力に依存しないことになります。

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このような考察をふまえて、PREDUCTを制作してみました。
006では、松ぼっくりの下に置かれたオブジェがCGです。いわゆるCGと写真の合成ですが、単純にCGを写真に合成しようとするとどうしても違和感というか、あり得なさが露呈してしまいます。その理由は、前述したようにCGと写真が目指すベクトルが異なっているため、画像の質にズレが生じるからです。ところが、CGと写真が目指しているベクトルの交点(Crossing Point)を意識すれば、レンズのピントが合うように両者のズレは消え、自然に融合します。

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私たちは実に多くのプロダクトデザインを「知っている」のですが、その全てを実際に見たり触ったり使ったりしているわけではありません。そのほとんどは、雑誌やインターネットなどのメディアを通して知っているにすぎません。それにも関わらずそれらが実在すると思っています。しかしそれらは本当は存在しないプロダクト、PREDUCTかもしれない。そういう疑いを持ってビジュアル情報は見るべきだと思います。
その一方でデザイナーは、PREDUCTを大量生産すると良いのではないかと思っています。なぜなら、デザインの善し悪しは、ビジュアル情報だけである程度判断できるからです。最小限のエネルギーでリアライズできるPREDUCTは、ゴミの山を作ることなくデザインの可能性を探る手法の一つになると考えています。