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一心堂 2014.3.30

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栃木県のお線香のメーカー株式会社 一心堂さんを訪問しました。一心堂は栃木の伝統産業振興プロジェクト「U」のメンバーです。
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一心堂さんは、大正5年(1916年)の創業以来、天然の香料を活かしたお線香を手づくりし続けています。特に漢薬や生薬を配合したお線香づくりを得意としているそうです。写真002は、粉末状のお線香の原料を調合した後、専用の機械で練っているところです。質感は温かく粘土のような肌合いでした。


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練られたお線香の原料はプレス機にかけられます。プレス機で押し出されたお線香は、パスタのように柔らかい。それを段ボール製の板で掬い取ります。

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写真006は、プレス機に装着されていた押出し用の型です。穴が2列になっていることがわかります。

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段ボールの板で掬い取られたお線香は、一定の長さにカットされます。カットされたお線香の切れ端が下のベルトコンベアに落ちているのが見えます。

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カットされたお線香の切れ端は再度練って使用するため、材料は無駄にならないのだそうです。ベルトコンベアから次々と落下してくるお線香の切れ端が、自然な有機曲線の山を築いていました。

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乾燥処理が終わったお線香は、一定の本数を専用の竹製のへらを使って数え、抜き取り、輪ゴムで束ねていくのですが、そのスピードの速さに驚かされました。

010:photo by Norihisa Seki

輪ゴムで束ねられた線香の上下に紙を巻き付けるマシンです。輪ゴムは最終的に取り除かれます。

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一心堂さんとは、真っ白なお線香「雪香」や、源氏香をヒントに作られた上品な香りがするお香とお線香「夢式部」(写真011)、火をつけずに香りを楽しむ今までになかったお香「風香」など、現代の私たちの暮らしに合ったお線香をデザイン開発してきました。それらは、「とちぎデザイン大賞優秀賞」や「栃木県デザイン協会賞」なども受賞していますが、一心堂さんが次々と新しいお香やお線香の開発にチャレンジできる理由は、確かな伝統技術に基づいた高品質なモノづくりにしっかりと軸足を置いているからなのだ思います。

012:photo by Norihisa Seki

写真012は、今年度発表予定の「風香hana」の試作です。昨年発売を開始した、火をつけずに香りを楽しむお香「風香」は、マカロンのようなカタチでしたが、「風香hana」は、花びらのようにデザインにすることによって、「香りの量を調整できる」「文香として手紙などに同封し香りを届けることができる」といった特徴を備えています。「風香hana」は、6月4日(水)〜6日(金)に東京ビッグサイトで開催されるinteriorlifestyle TOKYOにて発表される予定です。






株式会社 一心堂の社長、横山一志さんのご趣味は、ランチュウ(写真)の飼育です。ランチュウは江戸時代に日本で作成された金魚の品種ですが、品評会ではその造形美を競うことから「泳ぐ宝石」とも言われているようです。また、横山さんのパートナーでもあり新商品開発に力を注いでいる久楽持 浩司さんは、なんと神主さんでもあります。ランチュウと神主さんとお線香。伝統とあの世とこの世をむすびつける不思議な関係性を感じてしまいます。表層からはわからない魅力を一心堂さんは持っていらっしゃいます。

013:photo by Norihisa Seki