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間々田ひも 2014.5.30

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栃木県の伝統産業振興プロジェクト「U」のメンバーの間々田ひも店を訪問しました。

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写真002は、間々田ひも店で制作している組紐のサンプルです。
間々田ひも店では、日本古来の手組の紐を制作しています。手組の紐は、武士の冑(かぶと)の緒などに使われていました。現在では帯紐や羽織紐などに用いられています。間々田ひも店の創業は1922年。初代の渡辺浅市氏が、東京の組紐問屋、深井誠太郎商店での年季奉公から間々田に戻り店を構えたのが始まりだそうです。
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組紐には主として草木染めされた絹糸が使われています。草木染めの組紐は、使えば使うほど味が出る、手組の柔らかさや上品さがある、帯〆は一度締めると緩まないなどの特徴があるそうです。私は何よりも絹糸のつややかさに惚れ惚れしました(写真003)。
間々田ひも店で使っている生糸は、益子町の日下田工房で草木染めした絹糸や、間々田ひも店で化学染めした絹糸の他、純金、銀糸などを使っているようです。

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写真003は、染めた糸を小枠に糸付けする木製の繰り機です。まだまだ現役で駆動しているそうです。

004:photo by Norihisa Seki

繰り機のアメ色に経年変化したカムや、糸が巻き付いているシャフトに重厚さを感じます。こういうプロダクトには、人と同様の人格さえ感じ、モノとして見る事ができず、つい挨拶したくなります。

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写真006は、繰り上がった糸を紐の形態ごとに本数を決めて整える「糸あげ」をするための道具。繰り機のように年期の入った自動機械には人格のようなものを感じますが、手動式の道具にはそれを使ってきた人の気を感じます。

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糸上げされた糸巻きが並んでいる風景(写真008)は、気品ある日本独特のカラースキームを醸し出していました。

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「U」のメンバーとして参加している間々田ひも店の渡辺靖久さんに組紐を実演して頂きました。靖久さんは、間々田ひも店の二代目、渡辺浅市さんの息子さんです。浅市さんが若くして急逝し、浅市さんの妻、悦子さんが間々田ひも店の代表になり伝統を継承してきましたが、2002年に靖久さんがこの伝統技術を継承することを決意したそうです。

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写真009は「丸台」と言われる組台です。丸台は、主に組み下げて組む方法によって丸組から平組の紐まで組めるそうです。写真010は「角台」と言われる組台で、主に組み上げて組みます。写真ではわかりづらいかもしれませんが、丸台では下に、角台では上に組まれた紐が出て来ています。

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組台の外側に下がった糸を指で引っかけながら、規則正しく紐を組んでいくのですが、そのスピードが早く、いったいどういう規則で組んでいるのか見た目では全くわかりません。ついつい糸を組む規則の発見よりも、糸の先についた「玉」という重しどうしが、糸を組むたびにカチカチとぶつかり合う音の心地良さに聞き入ってしまいました。

渡辺さんに教えて頂きながら組紐づくりに挑戦してみました。8本の糸を教えて頂いた規則に従って交互に置き換えていくのですが、少し油断すると置き換える順序がわからなくなったり、糸どうしが重なり合ったりしてリズミカルに手を動かすことができませんでした。しかし、シンプルながら様々なパターンの組紐を作れる円台には編み物をする時のような無心になれる魅力を感じます。

011:photo by Norihisa Seki

昨年は、組紐で使用している糸で出来たフサ付のブレスレットやナプキンフォルダーを制作して頂き商品化しました(写真012)。

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今年度は、組紐で作ったひも結びの制作をお願いしました。花をイメージしたひも結びは昔からありますが、それらは大抵出来合いの紐を使って作ります。そのため、ひも結びは一色で作られていることが多い。しかし組紐だったら、紐を結んだ後の色分けを計画して紐を作れるのではないかと考えたからです。

まずひも結びで形状を作った後に、色彩計画を立て紐の色分け部分に目印をつけ、結びを解いて、目印を見ながら紐を作り、ひも結びを完成させなければなりません。ひも結びのカラーリングを計画して組紐を作るというアイデアを言うのは簡単ですが、それを実現させるためには極めて高度な技が必要です。

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写真013、014は、紅白で色分けした『華結び』です。表彰式などで胸に付けるリボンの花が安っぽいことが以前から気になっていたために制作をお願いしたのですが、おめでたい紅白のひも結びは他にも色々な用途が考えられそうです。

014:photo by Norihisa Seki

6月4日(水)〜6日(金)まで東京ビッグサイトで開催されるinteriorlifestyleでは、紅白の組紐で作ったひも結び以外の『華結び』も展示しますので、ぜひ直接ご覧頂きたいと思っています。