TOCLI_02 2016.9.14
ガラス製の容器、TOCLI(トックリ)が完成しました。制作はガラス作家の鷲塚貴紀さんです。
TOCLIは、飲み物を入れて使うことを考えてデザインしていますが、使わない時にはインテリアのオーナメントとして飾れることが特徴です。使っていない時でもアタマがフタになるため、容器の中が汚れることもありません。
moji & reno
デザイン:安次富 隆
制 作:鷲塚 貴紀
価 格:6,500円(税別)
デザインは2種類。のっぽのTOCLIは「modi(モジ)」、太っちょのTOCLIは「reno(ルノ)」と名付けました。色はそれぞれ3色用意しています。
やせっぽちな人、ふとっちょな人、世界には色々な人がいるから楽しいと思います。道具も同じです。同じ目的やコンセプトであっても、色々なデザインがあるから楽しいのだと思います。そこで、TOCLIのデザインコンセプトをオープンソース化することにしました。
デザインのオープンソース化
TOCLIのデザインコンセプトを富山ガラス工房に関わるガラス作家たちがオープンソースとして使えるよう企画しました。
TOCLIのデザイン要件は、
(1)徳利のようなくびれのある柔らかな曲線でできていること。
(2)フタになるアタマが付いていること。
です。
それ以外のサイズや服の色柄などは自由です。この緩やかなデザイン要件によって共通性を保ちながらも、作家は独自の考え方でTOCLIをデザインすることができます。
通常デザインは、知的財産権によってオリジナリティーを保護することができます。その反面、知的財産権の保護はデザインの進化滞らせる側面もあります。TOCLIのデザインコンセプトのオープンソース化は、このような知的財産権に対するアンチテーとして、オリジナルデザインを超えるデザインの創造を期待するデザイン・チャレンジでもあるのです。
デザインコンセプトのオープンソース化は、デザイナーがデザインコントロールをしないため、デザイナーとして無責任と指摘される危うさも孕んでいます。しかしTOCLIを制作するのは全てプロのガラス作家ですので、互いの作品に刺激を受けながらより良いデザインが創出されていくと思っています。
富山ガラス工房に関わる作家たちの作品
写真003は、私がデザインしたTOCLI、「modi」と「reno」を制作してくれた鷲塚貴紀さんのTOCLIです。
鷲塚さんは富山ガラス工房のスタッフを経て独立し活躍しているガラス作家です。鷲塚さんはHPを持っていませんが、検索すると作品が見られますのでぜひ見てください。私は鷲塚さんの存在感を主張しすぎない自然な佇まいを感じる作品が大好きです。
そういう作品の中で鷲塚さんのTOCLIは、特異な存在かもしれません。大きな顔が目を引きました。でも、静かな佇まいは他の作品と共通しているように思います。なんだか昔からそこにあったような気分になります。
鷲塚さんは高度なテクニックを持っていてカタチにはストイックと思うほど厳しいのですが、控えめな優しさが醸し出されていることが鷲塚さんの作品の魅力だと思います。
富山ガラス工房に関わる作家たちの作品
写真004は、小路口力恵さんのTOCLIです。
小路口さんは富山ガラス工房のスタッフを経て、”小路口屋”硝子工房を設立し活躍しているガラス作家です。
小路口さんのTOCLI「しずくん」は、見た目のかわいらしさに加えて機能性をさらに向上させていることが特徴です。
ユラユラ揺れる本体と頭を作ることは、非常に難しいことです。底面を重くすれば安定しますが、重くし過ぎると持ちづらくなります。頭などはフタとして使用する時に重心バランスが逆転しますので、重すぎると本体から転げ落ちる可能性も出てきます。そういう難しい課題を手づくりでクリアするのは至難の技です。ですから「しずくん」は、小路口さんが極めて優れた技を持っているからこそ実現できるデザインと言えるでしょう。
高度な技を持ちながらも、それをひけらかすことなく、かわいらしいデザインやネーミングでオブラードに包んでいるところに、小路口さんの作品に共通する優しさや奥ゆかしさといった魅力があると思います。
その他の富山ガラス工房に関わる作家たちの作品
小路口さん以外にも、多くの富山ガラス工房に関わる作家たちがTOCLIのデザイン制作に参加しています。
以下に、9月17日(土)〜30日(金)まで富山ガラス美術館のミュージアムショップで開催予定の展示を目指して富山ガラス工房の作家たちが制作している作品の一部を紹介します。
制 作 :中須 杏奈
タイトル :ネコ
コンセプト:ネコをモチーフに制作
価 格 :¥4,000〜¥5,000(税別)
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作家は常にオリジナリティーを求められているためなのか、似ているデザインが出てこないことに驚かされます。デザインの場合、市場からの要求や売れ筋の商品に影響され、見た目の印象が均質化していく傾向がありますが、9月の展示販売後に作家たちの作品の差異は広がるのか、それともデザインと同様に売れ筋のデザインに影響を受けるのか、今後の進展が楽しみです。